イギリスの郵便局

イギリス史上最大の冤罪事件の全貌:富士通の会計ソフトの重大な欠陥

  • 2024年1月11日
  • 2024年1月22日
  • 事件

この記事は2024年1月22日最新情報に更新しています。

冤罪事件の背景:イギリスの郵便局が直面した危機

イギリスの郵便局では、1999年から2015年にかけて大規模な冤罪事件が発生しました。この事件は、富士通の子会社が提供した会計システム「ホライゾン」の欠陥に起因しています。このシステムは、窓口の現金とシステム上の金額に不整合が生じるバグを含んでいました。結果として、700人以上の郵便局長が横領や不正経理の罪で有罪判決を受けました​​。

この問題が発覚した後、多くの有罪判決が覆されました。しかし、BBCによると、有罪判決が取り消されたのは93人にとどまっており、事件を巡る公聴会は2021年から続いています。イギリスのスナク首相は、「イギリスの歴史上最大級の冤罪」と述べ、被害者の無罪を証明し、迅速な補償を行うための新法の提出を明らかにしました​​。

この事件は、イギリスの郵便局長たちに対する誤った刑事訴追とその結果としての社会的および個人的影響の観点から、英国の法的および司法システムにおける重大な問題を浮き彫りにしました。また、この事件は、技術的なシステムの欠陥がどのように深刻な社会的影響を引き起こす可能性があるかを示しています。富士通は、調査への全面的な協力を約束し、英国議会下院のビジネス貿易委員会は富士通の関係者に証言するよう求めています​​。

富士通の役割:会計ソフトの欠陥がもたらした影響

この事件の核心には、富士通が開発しイギリスの郵便局に導入した会計システム「ホライゾン」の存在があります。このシステムはもともと英国のコンピューター企業ICLによって開発され、1990年に富士通が1800億円で買収、その後2002年にICLは正式に富士通に名称変更ました。ホライゾンシステムには多くのバグやエラー、欠陥が存在し、これが冤罪事件の主要因となりました​​。

このシステムの欠陥は、多数の郵便局長が詐欺や横領の罪で誤って訴えられるという前代未聞の大規模冤罪事件を引き起こしました。736人以上が起訴され、そのうち45人の有罪判決が取り消され、和解金として郵便局から87億円が支払われる事態に至りました​​。

この事件は、ITシステムの欠陥がどのように重大な社会的および個人的な影響をもたらす可能性があるかを示し、技術ベンダーの責任と透明性の問題を浮き彫りにしました。富士通の役割とその後の対応は、IT業界全体における品質保証と倫理の重要性を強調しています。

被害者たちの現状:誤って訴えられた郵便局長たちの声

イギリスの郵便局冤罪事件では、富士通の会計システム「ホライゾン」の欠陥により、多くの郵便局長が不正会計や横領の罪で誤って訴追されました。この事件により、多くの被害者が深刻な個人的および社会的影響に直面しています。

ある被害者、バルビンダー・シン・ギルさんは、郵便局長として働き始めた際に、ホライゾンシステムの会計の不整合に直面しました。ギルさんは郵便局から締め出され、10万8000ポンド(約1600万円)の盗難罪で告発されました。これによりギルさんは自己破産を申請し、社会的信用を失い、低賃金の仕事に就くことを余儀なくされました。さらに、ギルさんの母親も5万7000ポンド(約823万円)の横領罪で有罪判決を受けました​​。

このような状況は、550人以上の郵便局長に共通しており、多くの人々が自分たちの声がようやく認められたことに安堵しています。しかし、彼らが経験した個人的、金銭的、および心理的な損失は計り知れません。富士通は、この事件に関して「判決を非常に深刻に受け止め、新しく分かったことを詳細に見直すつもり」と回答しています​​。

法的な対応:事件への英国政府の取り組み

イギリス政府は、富士通の会計システム「ホライゾン」による冤罪事件に対して、積極的な法的対応を行っています。この事件により、多くの郵便局長が不当に横領や詐欺の罪で告発されました。政府は、この問題に関して富士通に責任がある場合、同社に賠償責任が生じると述べています​​。

ロンドン高裁判事は、富士通が提出したホライゾンのバグやエラー、及び証拠を適切かつ完全に調査していないことから欠陥に関する証拠の信憑性に「重大な懸念」を表明しており、裁判資料を検察当局に送付しました。高裁判事は富士通を厳しく批判し、システムの問題を認識しながらも対処していなかったとの見方を示しています​​。さらに、富士通はホライゾンの端末が外部からアクセスされ、取引が無断で変更される可能性があることを認めています​​。

さらに、富士通の上級副社長は英下院ビジネス・エネルギー・産業戦略特別委員会の質問に対しても裁判での同様の主張を繰り返しました。彼は、事件に関するすべての決定はポストオフィスによって行われたと述べ、富士通はそのような事故を正しく分類していなかったことを認めました。これにより、富士通の責任が問われる可能性が高まっています​​。

富士通への批判とその対応:技術大手企業の社会的責任

イギリスの郵便局冤罪事件において、富士通の会計システム「ホライゾン」の欠陥が大きな批判の対象となっています。このシステムの問題が発覚した後、イギリスの一般市民からの怒りが沸騰し、富士通に対する批判が高まりました。多くの郵便局長が不当に告発され、精神的、経済的な苦痛を経験し、一部の場合には自殺に至るまで追い込まれたことが、この怒りの原因です​​。

富士通は、事件に関しては直接の訴訟当事者ではないとしながらも、判決を非常に深刻に受け止めており、新たに発覚した事実に関して詳細な検討を行う意向を示しています。この事件は、大手技術企業における製品の安全性と信頼性、そして社会的責任に対する重要な問題を提起しています。

富士通からのコメント:執行役員、社長が謝罪、導入当初から欠陥を認識【2024年1月20日更新】

執行役員の謝罪

2024年1月16日にイギリス下院の委員会で富士通本社の執行役員ポール・パターソン氏は「富士通には被害者の補償に貢献する道義的な責任がある」と謝罪し、救済に取り組んでいく意向を示しました。

一方、委員会に出席した被害者の1人は、富士通幹部による謝罪について「(謝罪を)言うのは簡単。心からの言葉ならいいのに」、「(そうは思わない?)思わない。会社での地位が高いと謝罪するしかない」と述べたうえで、「補償が早く進むよう望んでいる」と訴えました。

社長の謝罪

富士通の時田隆仁社長は「郵便局長や家族の人生に壊滅的な影響を与えたことをおわびする」と謝罪しました。

これは、スイスで開かれているダボス会議=世界経済フォーラム年次総会に出席するため現地を訪れていた時田社長がイギリス・BBCのインタビューに答えたもので、「非常に深刻に受け止めている」「郵便局長やその家族の人生に壊滅的な影響を与えたことをおわびする」などとコメントしました。

富士通によりますと、時田社長が公の場で事件についてコメントするのは初めてだということです。

導入当初から欠陥を認識

2024年1月19日、富士通 ポール・パターソン執行役員が公的な調査委員会に出席し、「(1999年に)システムが導入された当初からバグやエラー、欠陥があり、(富士通の)関係者は皆、認識していた」 とシステムに29の欠陥などがあったことを認め、“こうした事実を郵便局の運営会社に知らせていた”と述べました。 富士通 ポール・パターソン執行役員 「確認すべきことが出てきたので、それを確実に行っていきます」 富士通はイギリス政府と協議し、被害者への補償について検討する方針です。

被害者のコメント【2024年1月22日更新】

リー・キャッスルトンさん

元郵便局長リー・キャッスルトンさんは「91回電話をかけ、収支に問題があることを伝えましたが、無視され、一切助けてもらえませんでした」と当時の状況を語りました。郵便当局から刑事訴追はされませんでしたが、差額の返金を求める民事裁判を起こされ、敗訴。多額の支払い(約32万ポンド=6000万円超)を命じられました。元郵便局長 リー・キャッスルトンさんは「すべてを失いました。子供たちも嫌がらせを受けた。悪口を言われたり、唾を吐きかけられたり…」「言葉だけでなく、行動してほしい。被害者を助けるため、正しい行動をしてください」とコメントしました。

ジャネット・スキナーさん

郵便局長ジャネット・スキナーさんは、5万9000ポンド(約1100万円)の不正会計を実行したとして2007年に禁錮9カ月の実刑判決を受け、3カ月ほど収監されました。スキナーさんは収監された初日、刑務所で指紋を採られ、裸にされた屈辱を証言しました。子供にも会えず、錯乱状態に陥った。出所後は家を売却し、実際には盗んでいない現金の返済に充ててきたということです。「刑務所に入れられ、泥棒の烙印(らくいん)を押された。私の人生は台無しにされた」と独立調査委員会で陳述しました。

イギリスの対応に責任ありとの声も【2024年1月22日追記】

英国有企業「ポストオフィス」の責任

英国では郵便局が民営化されており、それを統括する国有企業「ポストオフィス」には起訴など刑事手続きの一部権限があります。英スカイニューズ・テレビによると、誰かを起訴し、財産没収に成功した場合、起訴を実行した調査官には「ボーナスが支払われた」ケースも度々あったといわれています。

英政府は事件を受け、ポストオフィスの「起訴権停止」を検討中と報じられています。元検事のケン・マクドナルド氏は英紙ガーディアンに、事件は「制度の失敗」と指摘し、「ポストオフィスが自らのスタッフを起訴する権限を持っていなければ、事件は起きなかった」との見方を示しました。「無実の罪」で収監されたスキナーさんもこうした点を訴えており、警察がポストオフィスの責任も捜査すべきだと述べています。

英全政党の責任

英紙フィナンシャル・タイムズは「全政党に果たすべき役割があった」と政治家の怠慢を指摘する声もあります。会計システム「ホライゾン」の欠陥については既に99年の時点で当時のブレア首相(労働党)に報告されていましたが、放置されていたとも報じられています。その後、保守党政権に代わっても郵政担当閣僚らは「ホライゾンに問題はない」との見解を変えなかったことが問題視されています。

英政府は今後、被害者1人あたりに7万5000ポンド(約1400万円)の補償金を支払う意向を表明しています。警察当局も捜査に乗り出す方針ですが、大量の文書を調べる必要があるため、捜査終結には2年ほどかかるとも報じられています。

まとめ

イギリスの郵便局冤罪事件は、1999年から2015年にかけて発生した大規模な誤った刑事訴追の事件で、富士通の子会社が提供した会計システム「ホライゾン」の欠陥が原因でした。このシステムの不整合により700人以上の郵便局長が横領や不正経理の罪で有罪判決を受け、この問題が発覚した後、多くの有罪判決が覆されました。イギリスのスナク首相は、被害者の無罪を証明し迅速な補償を行うための新法の提出を明らかにしました。この事件は、イギリスの法的・司法システムにおける重大な問題を浮き彫りにし、技術的なシステムの欠陥が引き起こす社会的影響を示しました。

富士通のホライゾンシステムの欠陥は、冤罪を生む大規模な問題を引き起こし、736人以上の郵便局長が起訴され、和解金として87億円が支払われました。この事件は、IT業界における品質保証と倫理の重要性を強調しました。

被害者たちは、個人的、金銭的、心理的な大きな影響を受けました。富士通は、判決を深刻に受け止め、新たに発覚した事実を詳細に検討する意向を示しました。さらに、富士通の執行役員と社長は謝罪し、被害者の補償に貢献する意向を表明しました。

イギリス政府は、この問題に対して積極的な法的対応を行い、富士通に賠償責任がある場合、同社に対してそれを求めています。また、英国の「ポストオフィス」が起訴権を持ち、事件に関わっていたことも明らかになり、政府はポストオフィスの起訴権停止を検討しています。全政党にも怠慢が指摘されており、英政府は被害者1人あたりに7万5000ポンドの補償金を支払う意向を示しています。

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