コロナ後遺症とは?最新の研究結果を基に解説
コロナ後遺症とは?
コロナ後遺症、または「Long COVID」とは、新型コロナウイルス(COVID-19)感染後に、感染性は消失したものの、他の原因が明らかでない症状が持続する状態を指します。これには、感染直後から持続する症状、回復後に新たに出現する症状、症状が消失した後に再び生じる症状などが含まれます。
世界保健機関(WHO)によると、コロナ後遺症は通常、COVID-19の発症から3ヶ月以内に発生し、少なくとも2ヶ月以上持続する症状とされています。これは他の疾患による症状とは異なるものです。
最新研究と発見:ヘルペスウイルスが活性化
アメリカ・イエール大学の岩崎明子教授率いる研究チームによると、新型コロナウイルスに感染した後、症状が長引く人々では、血液中の物質に特定の変化が見られることが判明しました。この研究は科学雑誌「ネイチャー」で発表され、新型コロナの「後遺症」の正確な診断や治療法の開発に応用可能であるとされています。以下はその論文となります。
Distinguishing features of long COVID identified through immune profiling
研究チームは、新型コロナに感染後、けん怠感や息苦しさなどの症状が1年以上続く「後遺症」がある人、後遺症がない人、感染しなかった人など、合計268人の血液成分を分析しました。その結果、後遺症がある人々では、以下のような変化が確認されました:
- B細胞やT細胞と呼ばれる特定の免疫細胞が血液中で増加している。
- 体内で潜伏していたヘルペスウイルスが活性化している。
- 体の状態を一定に保ち、ストレス反応に関わる「コルチゾール」というホルモンの量が、後遺症がない人や感染しなかった人と比べて半減している。
岩崎教授は、「後遺症の中でも、けん怠感は、コルチゾールの低下が要因だと考えられ、他の症状も免疫とホルモンの量が不安定になることで起きている可能性がある」と述べ、後遺症があることを周りに理解されず悩み続ける人も多いため、原因の解明とさらなる研究の進展を目指すことを強調しています。
後遺症が出るメカニズム
新型コロナウイルス感染症の後遺症が発生するメカニズムには、以下の4つの仮説があります:
- 初期の症状が治まっても、残ったウイルスやその断片が炎症を引き起こす。
- 本来、体を守るはずの免疫が自分の体を攻撃する。
- 感染によってダメージを受けた臓器の修復が長引く。
- ヘルペスウイルスなど、以前から体内に存在していたウイルスが再活性化する。
これらの要因が組み合わさって、さまざまな症状が引き起こされると考えられています。
後遺症の主要な症状:倦怠感、関節痛、記憶障害など
新型コロナウイルス感染症の後遺症には多岐にわたる症状がありますが、主要なものとして以下の症状が挙げられます:
- 疲労感・倦怠感
- 関節痛
- 筋肉痛
- 咳
- 喀痰
- 息切れ
- 胸痛
- 脱毛
- 記憶障害
- 集中力低下
- 頭痛
- 抑うつ
- 嗅覚障害
- 味覚障害
- 動悸
- 下痢
- 腹痛
- 睡眠障害
- 筋力低下
これらの症状は、回復後に新たに出現する場合や、一度消失した後に再び生じる場合があります。また、WHOによると、これらの症状は少なくとも2ヶ月以上持続し、他の疾患による症状ではない場合に後遺症とされます。
感染から1年半後の後遺症の現実
新型コロナウイルスに感染した後、症状が1年半後も続く人が多く見られます。国立国際医療研究センターの調査によると、感染から1年半後でも約25.8%、つまり4人に1人が記憶障害や嗅覚の異常などの後遺症を訴えています。
1年後の主な症状
1年後の段階で、以下のような症状が確認されました:
- 記憶障害:11.7%
- 集中力の低下:11.4%
- 嗅覚の異常:10.3%
- ブレインフォグ(思考力の低下):9.1%
- 抑うつ状態:7.5%
- 味覚の異常:5.9%
- 息切れ:5.6%
- けん怠感:3.8%
- 脱毛:3.5%
特に女性は嗅覚の異常や脱毛、集中力の低下が、重症だった人は息切れやせき、けん怠感が続く傾向がありました。
症状の変化と持続性
感染後の症状は時間とともに変化し、長引くことがあります。大阪大学の調査によると、感染後10日間の療養期間が終わった時点で約47.7%が何らかの症状を訴え、1か月後は5.2%、2か月後は3.7%でした。
後遺症の治療と対処法:現代のアプローチ
コロナ後遺症の治療アプローチ
コロナ後遺症に対する特定の治療法はまだ確立されていませんが、症状に応じた対症療法が一般的です。現在、国内外でさまざまな研究が進行中であり、新たな治療法の開発に期待が寄せられています。
rTMS治療の導入
最近の治療法として、反復性経頭蓋磁気刺激(rTMS)が注目されています。これは、患者の脳の特定の部位に磁気を使って刺激を与える治療法です。聖マリアンナ医科大学病院の佐々木医師らは、認知機能検査の数値をもとに治療を行い、特に処理速度や知覚推理などの指標が改善されていることを確認しています。
佐々木医師のもとでは、患者一人ひとりの症状に合わせてrTMS治療を行い、その効果を評価しています。患者によっては言語理解や記憶障害などの特定の症状が改善されることもあります。しかし、これがすべての患者に適用可能な治療法であるという結論には至っていません。
継続的な研究と発展
新型コロナウイルス感染症の後遺症に関するメカニズムは未だ完全には解明されておらず、多くの研究が進められています。例えば、岩崎明子教授は、ウイルス感染が長期にわたり持続するという仮説に基づき、新型コロナの治療薬を使った後遺症治療の研究を進めています。
後遺症の完治率と回復期間の見通し
コロナ後遺症の完治率と回復期間
コロナウイルスの後遺症については、完全な完治率や具体的な回復期間に関するデータは限定的です。しかし、国立国際医療研究センターの調査によると、感染から1年半後でも約4人に1人が記憶障害や嗅覚の異常など後遺症を訴えていたことが報告されています。具体的には、半年後には32.3%、1年後は30.5%、1年半後でも25.8%の人が何らかの症状を訴えています。
症状の改善と回復の見通し
多くの場合、後遺症は時間の経過とともに改善することが多いですが、症状が残存する方も一定程度存在します。特にオミクロン株では後遺症が出る割合が低くなる傾向がありますが、感染者が多いため、後遺症に悩む人は多くなる可能性があるとされています。
個別の症状と対応
後遺症の症状は個々に異なり、その回復も人によって異なります。特に、味覚や嗅覚の異常、けん怠感、ブレインフォグなどは感染から半年後でも一定の割合で残ることが報告されています。このため、個別の症状に対しては、専門医による診察と適切な対応が必要です。
長期的な影響とケア
コロナ後遺症の長期的な影響についてはまだ研究が進行中であり、症状の種類や重症度によって回復期間は異なります。厚生労働省は、後遺症の症状が続く場合には労災を申請することも可能であるとしています。
患者の体験談:コロナ後遺症との闘い
コロナウイルス感染症の後遺症は多様な症状を引き起こし、患者の日常生活に大きな影響を与えています。
ブレインフォグとの戦い
Aさん(44歳)は、急に記憶が抜け落ちる「ブレインフォグ」に苦しんでいます。外出中にも方向感覚を失うなど、日常生活に支障をきたしており、不安感や睡眠障害も伴っています。専門医の診断により、新型コロナウイルス感染症の後遺症と診断され、ステロイド治療やリハビリを行っています。症状は徐々に改善し、現在は記憶力が復活しつつあるとのことです。
慢性疲労との闘い
60歳の男性は、感染後に肺炎を経験し、仕事復帰後も持続的なけん怠感や不眠、ブレインフォグに苦しんでいます。後遺症外来での治療にもかかわらず、症状は完全には改善していません。
沖縄県立中部病院の髙山医師によると、2割程度の患者が長期間にわたる体調不良を訴えています。社会的ストレスや長期入院による身体機能の低下、心理的不安が後遺症の持続に影響を与える可能性があります。
希望の兆し:若年層の体験談
16歳の女子高校生は、感染後にめまいや頭痛、強い疲労感に苦しんでいましたが、後遺症専門外来での治療とリハビリにより徐々に改善してきています。彼女はバランス感覚を取り戻すトレーニングや、嗅覚の改善を促すトレーニングに取り組んでいます。これらの取り組みにより、症状は次第に軽減し、彼女は前向きな気持ちを取り戻しています。
専門家からのアドバイス:後遺症を乗り越えるためのヒント
コロナウイルスの後遺症について、専門家たちはさまざまなアドバイスを提供しています。
後遺症の判別と診断の重要性
高知大学の横山彰仁教授は、コロナ後遺症と他の症状の区別が難しいと指摘しています。睡眠障害や精神的な問題など、異なる要因による症状との区別が重要です。
ブレインフォグの理解と対応
岐阜大学の下畑享良教授は、ブレインフォグの理解について、新型コロナ感染による全身の炎症が原因である可能性を指摘しています。これに基づいて、対症療法が行われています。
予防としてのワクチン接種
名古屋工業大学の平田晃正教授は、コロナ感染者が後遺症の症状で受診する頻度が高いことを報告しています。重症化した人やワクチン未接種の人で後遺症のリスクが高いことが示されており、これらの患者には継続的なケアが必要です。
早期のリハビリテーションの重要性
日本集中治療医学会の調査によると、重症化したコロナ患者の半数ほどが1年後も認知機能の不調を訴えており、早期にリハビリテーションを行うことの重要性が指摘されています。
世間の反応
SNS上では、コロナ後遺症に対する様々な個人的な経験、感情、社会的認識、そして医療体制に対する見解について投稿しています。以下はコメントの一例です。
- 医師や医療体制に対する不満や批判
- 「後遺症の理解がない先生だった」
- 「医師から見放された」
- 「ドクターショッピングしてた頃、「気にしなければ治る」とか「疲れてるだけ」、「そんなに気になりますか」とか病院で言われて、涙目で家に帰ってきたこともあった。」
- コロナ後遺症の症状とその影響
- 「一定の割合で生じるコロナ後遺症は本当にシビアです。」
- 「コロナ感染後、なかなか改善しない諸症状で悩んで近医に受診したが、「治せない、無理」と言われて絶望した。」
- 「コロナ後遺症、慢性疲労症候群疑いで完全に寝たきりでベットから起きる事もできず、先生もどうして良いのか悩まれていたでしょう。」
- 治療と回復に関する経験や開示
- 「コロナ後遺症外来に辿り着いたとき、光が見えた。ただ一つの希望の光。」
- 「転職先の上司にコロナ後遺症で脳疲労や不調が残ってること話せた!」
- 「学校の役員の話ですが、現在コロナ後遺症の療養中の旨記入したものを提出しました!」
- 社会的な認識と意識の不足
- 「マスク中毒者が日本に増えた事が最大のコロナ後遺症だわ」
- 「コロナ後遺症 が寛解し、いざ社会復帰となった時、志望する事業所がどれだけ後遺症に対して知識や理解があるかが重要になると思います。」
- 個人的な感情や心境の変化
- 「コロナ後遺症はきちんと治る病気です。」
- 「元気だった自分をもう思い出せないのとてもわかる。後遺症になって3年。」
まとめ
この記事は、「コロナ後遺症」とその影響について詳細に解説しています。コロナ後遺症、または「Long COVID」とは、COVID-19感染後に、感染が消失した後も症状が持続する状態を指し、WHOではこれを感染後3ヶ月以内に発生し2ヶ月以上持続する症状と定義しています。主要な症状には疲労感、関節痛、記憶障害などがあります。
最新の研究では、岩崎明子教授率いるチームが血液中の物質の変化を発見し、後遺症の診断や治療法の開発につながる可能性があります。感染から1年半後も約25.8%の人が後遺症を訴えており、特に女性は嗅覚の異常や脱毛、集中力の低下に悩まされることが多いです。
治療法にはまだ特定の方法が確立されていないものの、対症療法や新しい治療法の開発が進められています。一例として、rTMS治療が注目され、特定の認知機能の改善が見られています。
個人の体験談では、ブレインフォグや慢性疲労といった症状に苦しんでいる患者の話が紹介されています。これらの症状は日常生活に大きな影響を及ぼし、社会的、心理的なストレスが後遺症の持続に影響している可能性があります。
専門家からは、後遺症の判別と診断の重要性、ブレインフォグの理解と対応、予防としてのワクチン接種、早期のリハビリテーションの重要性についてのアドバイスが提供されています。
最後に、SNS上ではコロナ後遺症に関する様々な個人的な経験、感情、社会的認識、医療体制に対する見解が共有されています。これらの声は、コロナ後遺症の多様性と社会的影響の大きさを示しています。